沖縄・離島の子ども派遣基金
島しょ地域の沖縄では、部活動に取り組む子どもたちが全国大会に出たり、島外や県外での遠征試合に参加する移動手段は飛行機となるため、他県に比べて旅費がかさみます。
行政や学校も補助を行っていますが、全ての旅費をカバーする事は難しく、地域によっても対応に差があります。そのため、生まれ育った土地や家庭環境によっては、どんなに可能性があっても夢を諦めざるを得ない子どもや、遠征に行けず部活動を辞める子どもが出てきています。また、そういった悩みを抱える過程で、孤独を抱える子どもも少なくありません。
みらいファンド沖縄では、2019年度~2022年度にかけて、休眠預金を活用したモデル事業「沖縄・離島の子ども派遣基金事業」を実施し、実際に派遣費の支援を行いながら、実態調査を行いました。
本基金では、休眠預金事業での実績や学びを活かして、子どもの派遣に対する助成とその課題の啓発活動を行っていきます。
「派遣費問題」と一言で言っても、その内実は多岐に渡ります。前述の休眠預金事業を通じて3カ年調査をする事で分かってきた問題だけでも、以下の7つに分類できました。
1、生活している地域による旅費格差
2、競技種目による費用負担格差
3、強化活動に参加できず成長の機会が奪われる
4、生活している地域による成長の機会格差
5、障がいを持つ子どもの派遣に関わる問題
6、子どもの体験の質に関わる帯同者
7、短期間で煩雑な旅行手配
上記のそれぞれの問題に関する具体的なエピソードや論点は以下の白書内でご紹介しています。
上述の休眠預金事業では、以下の3団体を通じて、子どもたちや帯同者に派遣費支援を実施する事で、実態調査を進める事ができました。
・一般社団法人サッカー協会
・株式会社ハブクリエイト
・特定非営利活動法人豊見城市体育協会
また、休眠預金事業期間中、派遣費問題に関する様々なテーマで円卓会議を計13回実施し、当事者や保護者、企業、行政、学校関係者など様々な立場の方(延べ45名)にご登壇いただき、派遣費問題に関する論点を深堀する事ができました。
今後も上記の事業を通じて繋がりを持ったステークホルダーの方々を中心に連携しながら、問題の解決を目指します。
3か年間の休眠預金事業期間が終了した後も子どもたちへの支援が続けられるよう、「沖縄・離島の子ども派遣基金」を休眠預金事業期間で立ち上げました。
多くのステークホルダーの参画が叶う基金設計とするため、休眠預金事業期間中、4件の大会派遣に対して、それぞれ寄付金を募り、助成を行い、基金モデルのブラッシュアップを行ってきました。(大会派遣毎に寄付を募り、助成する本メニューを「大会基金」と呼んでいます)
その他、休眠預金事業「沖縄・離島の子ども派遣基金事業」全体の実績は以下をご参照ください。
休眠預金事業で得た知見を踏まえて、地域や団体が「沖縄・離島の子ども派遣基金」を活用し、派遣費に関する負担軽減に取り組めている状態を目指し、具体的に以下のような活動を進めています。また運営するみらいファンド沖縄自身も持続可能な運営体制を模索しています。
1、すでに事業化しつつある「個別大会基金」のブラッシュアップ
2、困窮世帯が気兼ねなく応募できる給付型奨学金メニューの議論
3、沖縄県に対する離島施策の充実と、ふるさと納税活用への提言
4、メディアと協働した啓発活動
5、子どもの権利保障を目的とした運動への参画
6、各競技団体と地域企業をつなぐ基金プロジェクトの始動
7、手配の相談や夏場の旅費コストダウンを目指した「派遣ワンストップサービス(仮)」の実行可能性調査
本基金の最終的に目指す所は、「子どもの体験保障」です。
この派遣費支援の仕組みを活用し、子どもたちのさまざまな体験機会を地域で支える取り組みを進めていきたいと考えています。
遠征に参加して、他チームと自分たちのチームのプレーの違いはもちろん、サッカー以外の日常生活の違いにも気づき、その後はより意識してトレーニングに取り組んだり、日常生活を送ったりするようになりました。
(中学生、沖縄本島在住、サッカー)
沖縄本島はたくさん学校があるので、いろいろな学校と練習試合ができるけど、離島は学校も少なく、限られた学校同士で練習しなければならないので、経験が積みにくい。
補助金などを使って、親に負担をかけずに本島に遠征に行かせてもらえると、たくさん経験ができるので嬉しい。
(中学生、石垣島在住、バレーボール)